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【イベント】NPO法人代表中村からのスピーチ全文

 本日はお忙しいところ、NPO法人eboard3周年イベントにお越し下さり、誠にありがとうございました。遠くは関西、島根などから私たちの活動をご理解頂き、応援してくださる方々にお集まり頂くことができました。感謝とご報告、また次への決意の場を、こうして持たせて頂けたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。

NPO法人eboard3周年記念スピーチ(代表理事中村孝一) from eboard on Vimeo.

 3年前の12月5日、eboardはNPO法人になりました。動画をアップロードし、eboardという学習サイトを始めた日から1年以上が経過していました。そこから得られる収入はなく、私は前職での貯金を食いつぶし、家庭教師や塾講師を掛け持ちしながら、有り体を言えば、自分のわがままをやっていただけなのかもしれません。思いだけが先行し、団体としても個人としても、道は開けていませんでした。


 しかし、その同じ年の夏、1件のメールから新しい取り組みがスタートしていました。人口6千人程度の小さな町。島根県吉賀町。この町の教育委員会で、4月から学習支援にチャレンジされていた、私と同い年の方からのメール。財源もない。人もいない。そんな中、「eboardを学習支援に使えないか」と連絡を頂いたのが始まりでした。スタッフの熊谷と、夏休みの1か月教員宿舎に泊まり込みながら、サポート、モデルづくりに当たりました。

—中学生が自分たちの作った動画やサービスで、学校で、学習をする—

放課後の学校とはいえ、学校とは縁がなくなっていた当時の私には、イメージしがたいものでした。「本当に、eboardで学習の場を作れるのだろうか」と。

 

 ところが、そうした不安を生徒たちは、ぬぐい去ってくれました。取り組み開始から1週間後、「中村さん、全部終わったで」と、ある男の子が中学数学の全単元の履歴を見せにきてくれました。生徒によってばらつきはあれど、人的に限られたサポートの中で、それぞれが自分のペースに応じて学んでいくことができる。「自分のやってきたことは間違ってなかったのかもしれない。まだその可能性をあきらめたくない」。ふらつきながら、ようやく1歩を踏み出せた気がしました。

 

 もちろん、たくさんの失敗もありました。無数の試行錯誤がありました。翌年も毎週のように兵庫から吉賀町に通いました。毎週担当者の方とスカイプで議論し、時には教育委員会に泊まり込み、パソコン教室で生徒の前でサイトを更新し、そうして1回1回を作ってきました。eboardという教材を作ってきました。現場でのモデルを作ってきました。— 正しくは、多くの方の力を借りて、一緒に作って頂きました。

 

 そして、その中から、eboardという団体が、私たちのミッションが生まれ、育ってきました。「学びをあきらめない社会を実現する」というミッションです。3年前、これを団体のミッションとして掲げ、法人化しました。それは私たちの目指したい社会の姿でもあり、同時に「あきらめちゃいけない」「あきらめられない」という自分たちを支える、力強いスローガンにもなりました。

 


 もしかすると、みなさんは、吉賀町の子、島根の子、田舎の子は、都会のような刺激もなく、塾にも行けず、恵まれていないと思うかもしれません。「格差の被害者」だと。 
 

 今年の夏、吉賀町の隣益田市の真砂という小さな地区に伺いました。ここにも、去年から公民館や地域の方がサポートにあたる、eboardを使った中学生の学びの場があります。真砂地区に伺う最後の日、中学生1人1人が、「真砂のいいところ」を発表してくれました。都会の子のようなプレゼンテーションスキルはありません。身振り手振りもありません。きれいなスライドもありません。
 

 しかし、そこには、真砂でしか得られない一人一人の経験がありました。ストーリーがありました。何より、強い「思い」がありました。今まで聞いてきたどんなプレゼンテーションよりも、感動しました。
 

 なんとかお礼にと、私も涙ながらに、生徒たちに伝えました。「地域でも、家族でもいい。みんなのように、自分が大切だと思えるものがあるのは、素晴らしいことです。かけがえのないことです。それを守り抜ける大人になってください。そのために、学んでください。力をつけてください。私たちeboardやお家の方、地域の方、先生方にとっては、みんなが学び、成長していくことが何より大切なものです。私たちがそれを守ります」
 

 彼ら・彼女らの可能性を、学びを、あきらめたくないと、決意を新たにできた瞬間でした。私たちeboardと、そのミッションは、多くの方に、何より子ども達自身によって、支えられてきました。

 

 

 子ども達を取り巻く様々な課題。子どもの貧困。不登校。地方の教育。私たちは、この課題を乗り越えることができるのでしょうか。
根拠のない理想を語る気はありません。残念ながら、全ての課題をなくしてしまうことは難しい、不可能でしょう。労働人口が減り、経済成長に限りが見える中、次の世代に当てられる資源は限られています。これからますますこの国が力を失っていく中で、私たちに残された時間は多くありません。国民と同じく国が老化していく中で、体力のあるうちに、次の世代へと引き継げる国づくりをしていかなければなりません。
 

 今の日本が様々な病魔に蝕まれているとするならば、病気に対する「治療」が必要です。しかし同時に、病気とつきあいながら、それに負けない免疫力の高い、強くしなやかな体を、社会を、作っていく必要があります。まだ体力の残されているうちに。そして、来るべき時に備え、新しく芽吹くための「種まき」が必要です。それを担うのが、教育であると、私たちは強く信じています。
 

 お金がない。人がいない。塾がない。学校に行けない。たとえ、どんな環境にあっても、子どもたちが「学んでみよう」と思ったとき、子どもたちの学びを「支えたい」と思ったとき、「いつでも、どこでも」それが実現できる。それが、私たちの目指す「学びをあきらめない社会」です。

 


 私たちは、I CTの力を使って、次の時代の「学びを支える土壌」を作ります。それは病気への特効薬ではないかもしれません。流れる血を止められるものではないかもしれない。ただ、時には病気を未然に防ぐ「ワクチン」になり、またある時には怪我からの回復を早める「栄養」になります。

 「いつでも、どこでも」自分のペースで学べる教材は、日々の学習のつまずきや遅れを減らし、支援のノウハウを学べる研修は、先生や地域、現場の方のサポート力を高めます。そうして培われた「学びを支える土壌」があれば、インターネットを通して、限りない学びの機会を、次の世代への「種」を、まいていくことができます。残りすくない時間の中で、この「学びを支える土壌」を作れるかが、私達に与えられた課題であり、ミッションです。

 

 今日お越しいただいた皆さん、またこの話を聞いて頂いた皆さん、1人1人にお願いがあります。どうか、私たちのミッション、現場の方とつくりあげ、子ども達に支えられてきたこのミッションを、一緒に支えて頂けないでしょうか。「学びをあきらめない」という思いを、私たちと一緒に、少しずつ背負って頂けないでしょうか。
 

 法人化から3年。組織の規模はそれほど変わりませんが、私たちeboardは大きく成長することができました。前が見えず、不安で、今にも倒れそうだった団体は、多くの方に前を照らして頂き、一緒に歩んで頂き、時には背中を押して頂き、やっと歩くことができるようになってきました。組織としては、まだ歩き始めたばかりですが、胸には「学びをあきらめない」という強く大きな思いを秘めています。
 

 しかし、私たちeboardができることには、限りがあります。1人で背負うには、子ども達の未来と可能性、そして私たちのミッションはあまりに大きい。そして、独り占めするには耐えがたい、最高にエキサイティングで、魅力的なものです。想像してください。子ども達が、インターネットを通して無限の学びにつながり、それを身近にいる大人も、一緒に学びながら、支えられる社会を。「学びをあきらめない社会」を。

 

 スピーチの最後にこれまでご理解・ご支援頂いてきた方々に、もう1度お礼をと思ったのですが、それは子ども達から、ぜひ受け取って頂きたいと思います。ともに、これから、「学びをあきらめない社会」を目指していく中で。
私からは、本日のご来場と、私の長い話にお付き合い頂いたお礼まで。本日は、誠にありがとうございました。

 

eboardでは、現在クラウドファンディングに挑戦しています。応援のほど、宜しくお願い致します。

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